第14章 青くさい春。
校門の前に一人立つ。
みんながワイワイと帰っていく中、私はただ、ひとりで立ち続けた。ひとりで立っている私は奇異の目で見られた。
手には英語の単語帳を持ってはいたが、目はチラチラと通っていく人に向いていて、英単語ひとつ、覚えられるはず無かった。
見たことある顔を見つけると手を振った。
「あっ!人使くん!」
「…安藤なにしてんの?」
「ちょっと、人を待ってるの。」
「へぇ、早く帰れよ。」
「うん。じゃあね。期末テスト頑張ろうね。」
声をかけられることもあった。
「あれぇ?こんな所でなにしてんの?」
「えっと……物間くん。別に、ちょっと」
「テスト前にそんな油売って、余裕だねぇ!!あっ!そうか君は優秀な優秀なA組だからかぁ!!」
「むっ……油売ってるわけじゃ…」
「おい物間!そうやってすぐ困らすんだから!!ごめんね安藤!なんか大切な理由あるんだよね。」
「……うん。助けてくれてありがとう。拳藤さん」
「うん!お互いテスト頑張ろう!」
「まぁ、優秀なんだから大丈夫なんだろ?」
「う……。頑張る。」
こうして見ると、友達が増えたなぁとしみじみと思った。
この学校に来て、たくさんたくさん友達ができた。初めて、こんなに友達ができた。
友達が増えて、いろんなことを学んだ気がする。
ずっと、友達って、夢のようなものだと思ってた。楽しくって嬉しくってすっばらしいものだと思ってた。
でも違った。確かに友達は夢のようで、凄く大切で大好きだ。でも、嬉しいだけじゃなかった。
天哉くんの苦悩を知った時は、胸がちぎれるほど辛かったし、でも、轟くんと友達になれた時は本当に嬉しかった。
今だって。
彼の笑顔を思い浮かべると、苦しくて。
でも、このままじゃ、嫌だ。
ぐっと、前を向き、彼を探した。
そして見つけた顔は、彼ではなく、電気くんと範太くんだった。