第13章 Always thinking unto them.
午後の授業中も私は集中できるはずもなく、ぼーっと空を眺めていた。
そして、昔のことを思い出していた。
小さい時、お母さんにひっついて学校であった嬉しいこと、よく話してたっけ。
(ほとんどが出久くん絡みのことだったような…。)
『おかーさん!それでね、いずくくんがね!』
『ふふっ。』
『?なんでわらうのー?』
『ううん。なんでもないよー。ひよこは出久くんが大好きなのね。』
『えっ!!』
『ふふっ。ひよこは優しい出久君が大好きなのねー!』
そう言ってお母さんは、また私のほっぺたをムニムニさわった。
私が好きなのは…出久くん……。
ちらっと出久くんの姿を見ると、彼は真剣に授業を受けてて、ちゃんとノートをとっている。前の席の勝己くんは全然ノートとってないから際立ってる。中学の時よりずっと逞しくなってて、かっこよくなってて…。
出久くんはどんな時も、大切な時はそばに居てくれた。
お母さんの、お葬式の時も。
…あれ?あの時って……。
ううん…。昔のこと、思い出すのはやだ。忘れよう。痛くなるから。また、痛くなるから。
そう強引に切り替えてパッと前を向いた。
その時だった。
「へぁ?」
時……既に遅し。
目前に先生のチョップが。
バシンッ
「いっ!!つぅ……。あ、相澤先生……。」
「はい、今の問題の答えは?」
授業を真面目に聞いていなかった私は、答えられるはずもなく…。
「え、あ、えっと、す、素敵なことです!」
「なんの話だ!集中しろ!授業中に何考えてんだ。」
「…っ!!ご、ごめんなさい。」
そうだった。今は期末試験前で、これで頭いっぱいになってちゃダメなんだ。
皆が私を見て笑った。鋭児郎くんが振り返ったように見えたけど、私は急いで視線を逸らしたので、どうだったかは知らない。
あ、また気にしちゃった。また、頭いっぱいなっちゃった。