第13章 Always thinking unto them.
「ぁ……」
そりゃそうだ。いるに決まっている。
私は考えるよりも先にぐるんと教室に背を向け、シミ一つないキレイな壁と向かい合った。
ちゃんと見てなかったけど、壁…き、きれいだなぁ…。
「ひよこちゃん?な、何してるの?」
「か、壁が……綺麗だなって……!!」
「かべ?」
鋭児郎くんに気づかれるのが怖くて、彼を見ることが出来なくて、そうやってカニ歩きのまま自分の席へむかった。席につくとただぼうっと前を向いていた。
鋭児郎くんは何事もなかったかのように電気くん達と談笑している。
私も、いつも通りに、いつも通りにしなきゃ。でも、いつも通りってなんだろう。私、いつも、何してたっけ?
そんなことも分からなくなってしまった。
ぐるぐると頭の中で考えていると、もう朝のSHRの時間だ。
前を見ると、自然に鋭児郎くんが目に入る。見ると意識しちゃうから嫌なのに、目に入ってきてしまう。それから頑張って目線を逸らすんだ。そんなローテーションを何回かした。
赤くてつんつんの髪の毛を、いつもなら何も意識しなかったのに、今はそれを見るだけでこっちまで赤くなってしまう。
そうやって私は、午前中ずっと、膝に手を置いて、身体を固くして生活していた。