第12章 友達と、友達のその先
そして、この特に意味の無い攻防は1分くらい続いた。
「……はぁっ、はぁっ……。やっと離してくれた!あの……もっと…仲良くなりたいからその、名前で呼びたくて」
「いいよ。じゃあそう呼べよ。」
「簡単に承諾!じゃあなんでさっき、」
「友達同士の戯れだろ。」
「……あそっかぁ……!ふひ、ふひひひ……よろしくね!私の友達!!」
「…いやお前バカだな。」
「なっ…違うよ!……多分。」
「ばーか」
ひとりでご飯を食べるのなんて、最悪だと思っていたけど、その日の食べたご飯は、思っていたよりずっとずっと楽しいものになった。
学食から教室に帰る道中は、楽しくなって鼻歌を歌っていた。
がらがらっとすっかり慣れたバリアフリーの大きいドアを開ける。教室にはまだあまり、人はいなかった。
お腹が満たされて満足していた私は、鼻歌を歌ったままぽてぽてぽてと歩いて自分の席へ向かった。
……はずだった。目の前に、大きな恐ろしい障害物が登場するまでは。
「あ、あの……。」
「おいクソたまご。」
「ひょえ!!なんで、ございましょう!!」
魔王様、勝己くんだった。物凄く怖い顔で私を見下ろしている。
この前の訓練の時からなんだか彼はずっとピリピリしている。何となくそれは察していた。それが、何に向けてなのか、誰に向けてなのかも、なんとなく。