第10章 正しき社会、幸せな社会
「……。ちょっと分からなくなっちゃってさ…。」
「なにが?」
1度口をついてしまった言葉は、鎖で繋がっていたかのようにスルスルと溢れ出てきてしまった。
「今生きている人を悲しませなながら作る未来って……きっと今もそうなんだよね…。」
「今?」
「いろんな事が起きて、戦争とか、そんな悲しいことがたくさん起きて、個性だってきっと、悲しいことに沢山使われて、でも、だからこそ今がある訳で……。今の私たちの生活は、きっとその、死の上になりたってるんだよね……。ステインさんのこと……もっと深く考えないと、いけなかった……。」
グルグルとあたまの中で考えていたことを口に出す。
時代が変わる時にあるのはいつも、死だ。時代を変えようと思うなら、死を覚悟しないといけないのかもしれない。
でも私は、誰にも死んで欲しくない。傷ついて欲しくない。どうすればいいのか、わからない。
考えを突き詰めれば詰めるほどお父さんの考えが否定されそうで、怖くて、考えは行ったり来たりする。
最近は、そんな暗くて小さな小路をグルグルと回り続けていた。
「……やっぱ安藤すげぇわ!」
「へ?」
悩みこんでいる私を尻目に電気くんはきっぱりと、とんでもなく明るい声をあげた。