第10章 正しき社会、幸せな社会
昼休み。私は電気くんのスマホで、件の動画を見させてもらっていた。
その動画では、ステインさんの思想やステインさんの過去が明らかになっていた。
『誰かが血に染まらねば』
ステインさんの言葉に、その声に、私は画面越しでも背筋が凍った。実際に聞いていた出久くん達はいったい、どんな気持ちだったんだろう。
「っ……」
「…や、やっぱカッコよくねぇ?」
「うん…。カッコイイ。ステインさん……こんな過去があったんだ……。」
申し訳なさそうな顔で、でも少し興奮したような顔で電気くんはいった。
電気くんは、ステインさんの考え方が好きなのかな。
この前話しただけじゃ知れなかった彼の過去。やっぱり彼は、凄い。そう思ってしまうのには充分すぎた内容だった。
「私……ステインさんと直接、お話したんだ。」
「え!?マジで!!?ステインさんて!!!」
「…うん。ステインさん、これとおんなじこと言ってた。だから、それじゃあダメだ……って……。」
「え、ぇえええええ!?まじどういうことだよ!!すっげぇ!!」
電気くんはものすごくいいリアクションをしてくれた。確かに口に出してみると凄いな、と我ながら思う。
「伝わったか、わかんないけど。……今生きている人達を悲しませながら作る社会なんて、そんなの間違ってるんじゃないかな…って。」
「……安藤、なかなかすげぇよな。…今生きている人を、か……。」
電気くんは感心したような顔で言ってくれた。
でも……わかんなくなっちゃったんだ。