第10章 正しき社会、幸せな社会
こうして、職場体験は幕を閉じ、いつもの日常へと帰ってきたのだった。
「お、おはよう。」
「おぉ!安藤くん!おはよう!」
「おはよう。」
「おはよう、ひよこちゃん!」
職場体験の前と後では少し違って、私は轟くんともちゃんと喋れるようになった。なんて喜ばしいことか。
皆は各々の職場体験について語り合っていた。
「まぁ、1番変化というか大変だったのは、お前らだな。」
「そうそう!ヒーロー殺し!」
「命あって何よりだぜ!マジでさ!安藤なんか意識不明だろ?すっげぇ心配だったんだからな!」
鋭児郎くんと瀬呂くんは、勝己くんに首根っこ引っ掴まれながら話しかけてくれた。勝己くんは、職場体験でイメージチェンジを図ったようで、八二分けもなかなか似合ってた。
「……心配してくれてありがとう。で、でも、私より、出久くんと焦凍くんと天哉くんの方がよっぽど大変だった…と思うよ。」
「お、安藤。呼び方…」
「あ''っ!!ごめんなさい!嫌だった…よね。気分悪くしちゃったよね、ごめん。癖なの…。」
何の気なしに呼んでしまった呼び方を指摘され、恥ずかしくって頭を抱える。
めちゃくちゃ恥ずかしい。やってしまった。この癖、どうにかしなきゃ。ずっと小さい子とばかり関わってきたから。前もなんか、同じようなことしたような…。なんか、謎の連帯感感じちゃってたから……。彼をこんなふうに呼んだらファンから刺されるかもしれないし……。私もファンだけど、もっと過激な人とか……。
「別にいい。呼びたいように呼んでくれ。」
優しいなぁ、……轟くんは。居た堪れないや。
「ありがたき幸せです……。」