第10章 正しき社会、幸せな社会
その後おばさんからも電話がかかってきた。鼓膜が破れてしまいそうなくらい大きな声で怒鳴られた。
それも、それだけ私のことを心配してくれていたんだと思うと、少し嬉しく感じてしまった。
次の日、天哉くんの診断結果が出た。
右腕に、後遺症が残るという。天哉くんはその傷は本物のヒーローになるまで背負っていくんだと言っていた。そう言う彼の姿は、すごく凄く、かっこよかった。
「……俺が関わると、手がダメになるみたいな感じになってる……。呪いか…?」
「呪い」
轟くんは、ガチトーンでそう言っていた。まじか轟くん。
「轟くんも、冗談言ったりするんだねぇ!!」
「いや、冗談じゃねぇ……。ハンドクラッシャー的存在に……。」
「「「ハンドクラッシャー!?」」」
意外と凄いネーミングセンスだ!
やっぱり彼って天然なんだ……。私、彼に手をクラッシュされても悪い気しないとおもうな……多分!
その日、天哉くんは退院していった。その時の彼は、前よりも一回り成長したような、そんな表情をしていた。
病院で私の職場体験は終わってしまったけど、色んなことを経験して、いろんなことを学べたと思う。
あの事件の後、もっと上手く立ち回れていたらと、何度も後悔した。もっと強くなりたいと、改めて強く感じた。苦い経験になったけど、凄く、成長できた、と思う。