第10章 正しき社会、幸せな社会
ゴチンッ!
「いっ!!つぅぅぅ……!傷が開くぅ……。」
「お前……誰かを助けようとするなんて随分ご余裕をお持ちですねぇ?」
病室に入るやいなや、相澤先生はつかつかと歩いてきて私にゲンコツを食らわせた。
私は意識不明の重体だったので、高校から担任である相澤先生が呼び出され、駆けつけた……らしい。なんか、ブチ切れている。
「ご、ごめんなさい。」
「お前は保護される立場だろうが!!」
やっぱり、めちゃくちゃ怒鳴られた。こんなふうに面と向かって怒られることって、あまりなかったから……。こわい、怖いよぉ!
「分かってんのか!?賞賛なんて出来るか!逃げて応援を呼んだ方がいい場合だってあんだぞ!」
「ほ、本当に、すみませんでした!」
「何に対してだ。はっきり言え。」
「へ?…なに…に……?」
「俺がなんで怒ってんのか、分かんないのか?」
先生が、どうして怒っているのか……。勝手なことをしたからじゃないのかな?
「か、勝手なこと、したか」
「違う。」
「先生の…仕事を増やしたから?」
「違う。」
私の予想は予想はことごとくはずれた。
?……ではなんでなんだろう?
「どんだけ心配したと思ってる。これでも一応担任だ。生徒のことは心配なんだよ!お前はいちばん弱いし、もともとヒーロー志望でもないからな。」
「!!」
先生は、心配してくれていたんだ。
でも、弱いって言われるとやっぱり何処か悔しくて、私も、みんなみたいに強くなって、心配されないくらいになりたい。そう思った。
「…心配かけて、ごめんなさい。」
「はい、よろしい。」
そう言うと相澤先生は、無表情のまま、頭を撫でてくれた。