第10章 正しき社会、幸せな社会
轟くんは、鳩が豆鉄砲くらったみたいな顔をしている。
「あのね、あのですね…なんかよくわかんないけど……体育祭のときいろいろ大変だったんでしょ?それでも真っ直ぐ、ちゃんと…向き合っていた轟くんがすごくすごくかっこよくって……ですね。……憧れたの…です。君みたいになりたいなっておもったんだ……す。友達になりたいなって……。」
「俺に……憧れた?」
「うん。君みたいに、真っ直ぐで、強くて、カッコイイひとになりたいなって、思ってね。」
「……変なやつ。」
轟くんはそう言うと私から目をそらした。……いきなり嫌われた?ていうか、もともと嫌われてた?私の無駄に逞しい想像力で悲しい想像がどんどん頭に広がっていく。
「……変なやつとは、友達に、なりたくない…?」
「別にいい。けど。」
「ほ、本当に……!?やった…!!轟くんと友達!!!」
「そんなに喜ぶことかよ。」
「…嫌われてると思ってた……!すっごく、嬉しい!」
「お前こそ、教室で会った時逃げただろ。俺の方が嫌われてると思ってた。」
「あ''……あ、あれは……その……ごめんなさい。…嫌いって、訳じゃないよ!絶対!!」
「そうか。…じゃあ、よろしくな。」
そして、私はひとしきりルンルンした。
嬉しい!友達増えた!嬉しい!!
そんなふうに喜んでいる私の隣で轟くんは、なんだか微妙な顔をしていた。また悲しい想像が広がっていく。
「と、轟くん…やっぱり、めちゃくちゃ嫌だった……?」
「いや……聞きてえんだが、友達って、何するんだ?」
「え……トモダチ……?」