第9章 英雄の後ろ姿
さっきの、犬だ、発言をお詫びし、私は自分の病室に戻って話を聞いた。なんだかとても大切な話だとか。
廊下で見た時は気が付かなかったけど、なんだか小さなお爺さんもいた。
「保須警察署署長の面構犬嗣だワン。」
「つらが…まえ…さん……。初めまして、安藤ひよこ…だ、わん。」
「今回の、ヒーロー殺しの事件について話がしたいんだワン。」
「あ…えっと…。」
とっても真面目で大切な話のはずなのにその可愛らしい語尾のせいであまり緊張感がない。
「さっき、緑谷くん、飯田くん、轟くんの3人には厳重な注意をしてきたワン。」
「えっ、なんで」
「例えヒーロー殺しだったとしても、資格未取得者が保護管理者の指示なく個性で人に怪我をさせることは許されないことなんだワン。」
そう言う面構さんの面構えは真剣で、勝手に緊張感も生まれてきた。ワン、という語尾には慣れてきたし。
面構さんの話を聞くと、警察は統率と規格を重要視し“個性”を“武”に用いない事としており、ヒーローはその“穴”を埋める形で台頭してきたのだという。
このような危ういバランスを保ってこれたのは先人たちがモラルやルールを遵守してくださっていたおかげなんだとか。
それならば、出久くんたちや、もちろん私も、注意されて当然だ。そう思ってしまった。これまで、たくさんのヒーローや警察の方々が守ってくれた秩序を、グチャグチャにするわけにはいかない。