第9章 英雄の後ろ姿
「彼らの事は、今回はもみ消させてもらったワン。処分云々はあくまで公表すればの話。彼らの未来に汚点を残したくないんだワン。」
「面構さん……。」
「だから、安藤さん。彼らが今回したことは、みんなには秘密にしていてほしいワン。」
「あ…ぇ?」
面構さんは、凄くいい人だった。そんなことしたら、面構さんが泥を被ることになってしまうのに。
それに、どうして私には注意しないんだろう。
「あ、あの、私には注意、しないんですか?」
「お前は個性、使っとらんだろう。」
「あ…あなたは?」
そう、隣で黙っていたお爺さんがいきなり話し出した。とっても小さい……けど、声は凛々しかった。ボケてはいないようだ。なんて、とんでもなく失礼なことが頭の中で過ぎった。
「そんなこたぁ、どうでもいい。」
「どうでも…よくないです…。」
「お前が個性を使えば、もっと酷いことになっとっただろう。お前の個性のこと、わしはしっとる。」
「えっ!な……なな」
「大概のヒーローはその個性が存在することは知っている。誰が持っているかはほとんどの奴は知らんがな。」
「っ……。」
「どんな奴か見に来た。」
一瞬、あの日の光景がフラッシュバックする。怖くなって少し、手が冷たくなってきたのを感じる。私の持っている個性の恐ろしさを改めてずしりと感じた気がした。
「大丈夫。みんな大人だワン。ヒーローは君を怖がったりしないワンよ。君が使わないようにすればなんら問題は無いワン。」
「は…はい。」