第9章 英雄の後ろ姿
意識が戻ってからは、回復は著しく早かった。
私の怪我は、奇跡的に大事な神経なや内蔵は傷つけることなく、後遺症も無いらしい。骨も折れてなくて、すぐ治る傷ばかりだった。それが、ステインの考えなのか偶然なのかは分からない。
回復した私は、独りぼっちの病室でぼーっと過ごしていた。酷く不安で、寂しい。
1日後、看護師さんが来て、歩いても良い、と言われた。その瞬間、私は飛び起き、出久くん達の病室に向った。だって、寂しかったから……。
閑静な病院の廊下を歩いていたら、向かいからスーツを着た、大柄な男の人が歩いてきた。スーツを着ているなんて、なんの御用なんだろう?
でも……あれ?よく見たら顔が犬だ!!
どういう事なんだろうか。犬が病院でスーツを着て歩いている。しかも、雰囲気がめっちゃカッコイイ。とってもジェントルマンだ。(雰囲気が)この犬さんの前では動物病院へ行ったらどうですか?なんて間違っても声に出せない気がした。
何事も無かったかのように、ポーカーフェイスで通り過ぎよう。そう決意した所、なんと声をかけられてしまった。
「安藤ひよこさんだワンね。少し、お話したいワンが、いいかい?」
「犬だ!!!」
これ以上ないほど犬な感じで。