第9章 英雄の後ろ姿
なんの考えもなしに立ち向かう。トレーニングしたことだけが、自信になった。
弱いのに何やってんだろう、私。あぁ、怒られるやつだ。相澤先生絶対怒るやつだ。こんなのただの蛮勇で、何の役にも立たなくて、迷惑しかかけないやつだ。
分かってるのになんで、なんで止まれないんだよ。
腕を切られた。痛い。
でも、痛いのを顔に出しちゃダメだ。不安にさせちゃダメだ。皆、頑張ってるんだから。
「絶対、傷つけさせたりしない!」
「やめろ、安藤くん…!」
「無茶だ!!」
太ももを蹴られ、刺された。怖い。痛い。でも、このままじゃ、天哉くんや、あのヒーローさんがやられちゃう。立ち上がらないと。
「きみ、何してるんだ!!死ぬぞ!!」
「お願いだ、やめてくれ!!君は関係ないだろ!!」
「へ、平気です!きっともうすぐ応援が来てくれるはずです!それまで、止めて見せます!守って見せます!!」
どうして携帯持ってないんだろう。来てくださいとは、言ったけど…。多分街は喧騒で、此処の声なんて聞こえない。でも、2人は助けなきゃ。強引でもいいから呼んで来ればよかった。なんてバカなの。救えないバカだよなぁ。