第9章 英雄の後ろ姿
「なん何でしょうか?正しい社会って。」
「ニセモノがいない社会だ。」
「……。それでみんな、幸せなんですか?」
「そこは問題ではない。」
「あなたが目指しているのは、みんなが幸せな社会じゃないんですか?本物のヒーローが求めているものは、みんなが笑顔でいられる社会なんじゃないんですか?」
「……。」
「このやり方であなたは満足するかもしれませんが、傷つく人が、きっと増えます。そうすれば、天哉くんみたいに、憎しみや怒りで行動してしまう人だってきっと増える。」
言葉が、溢れてくる。伝えたいことが、言いたいことが溢れてくる。
「そんなふうに、今、生きている人たちを悲しませながら作る社会が、どれだけのものだって言うんですか!」
「……」
「正直、あなたの考えは本当に凄いと思います。正しい……のかも知れません。でも、こんなやり方間違ってます。違う方法、考えてみませんか?」
だんだんと、彼の目をじっと見つめることに慣れてきた。綺麗な色。真っ直ぐで、意志が強い。
そうだよね、対話したら、理解しようとしたらあまり怖くなくなるんだったよね。怖い顔だとかはもう、関係ないや。