第9章 英雄の後ろ姿
勢いよく飛び出たものの、なんの考えも持っていなかった。天哉くんは倒れているし、なんか、もう1人ヒーローさんいるし!
しかも、なんか、ステインさん、思ってたより顔が怖い。こんな怖い顔の人、この世にいるんだ。目は……見れるほど肝座ってないよ。正直、超怖い。
「なんだ?お前は。」
…真っ直ぐで、芯のある低い声。
「天哉くんの、と、友達……です!!」
「なん、で。君は……戦えないだろう?個性、使えないだろ?」
「弱いことくらい、て、て、天哉くんより弱いことくらい、分かってる……でも、こんなのみて、助けないわけないよ。逃げられるわけないよ!」
「安藤く」
「天哉くん!怒りで我を忘れちゃだめだよ!お願い……1人でなんとかしようとしないで!!1人で抱え込まないで!!困った時は、頼ってよ!!だって、友達だもん!!!」
「……こいつはなかなか期待できそうなヤツだな。」
カッコつけてみたけど、正直怖くて震えが止まらない。でも、動くわけには、逃げるわけには。
あっ、そうだ携帯!携帯で助けを呼べば……って携帯ない!!忘れた!!私のぱこぱこケータイ!!私のバカ!!!アホ!!すっとこどっこい!!
みるだけで、戦いになったら到底勝てっこないってことは分かるし。このままじゃ、天哉くんが。
どうしよう、何をどうすれば。私……。
その瞬間、あの一言が頭に蘇ってきた。
『大事なのは、決めつけないこと、対話すること、理解すること。』