第9章 英雄の後ろ姿
なんの宛もないけど、天哉くんを探して走り出す。ヒーロー殺しステインはたしか、人気のないところで犯罪を行う…ってテレビでやってた……と思う。
必死に、しらみつぶしに探していく。
ズキンッ
「うっ!ぅぅぁ。」
心臓が痛い。こんな時に!
あまりの苦しさに立ち止まりそうになる。
「ダメ!!」
バチンっと、胸を叩く。
こんなことしてる暇ない。休んでる暇なんてない。こんなことしてる間に、天哉くんが……
駄目だ。嫌だ!!天哉くんは……大切な友達なんだ!!絶対に!!駄目だ!早くステインを見つけなきゃ!!
「インゲニウム!!お前を倒す、ヒーローの名だ!!!」
天哉くんの、声……?いつもの声じゃない。憎しみがいっぱいいっぱいこもった、怖い声。
その声は、騒ぎの中、路地裏から聞こえた。
「どこ!??天哉くん!!!」
「___ヒーローから最も遠い行いだ。だから死ぬんだ。」
今度は違う人の声が微かに聞こえる。
ネットリとした、でも、信念を強く持った声。
その発信源をやっと見つけた。
「天哉くん!!!!」
「安藤…くん!?」
「天哉くんから、離れろ!!!」