第9章 英雄の後ろ姿
その日の夕方。隣町で騒ぎが起こった。敵が大暴れしているらしい。ヒーロー事務所丸田にも応援要請がきて、私も参加することになった。
隣町とは、保須市。
天哉くんの行った場所。
さっと血の気が引く。本当の敵の存在を、ヒーローとしての立場で認識したのが初めてだから。
……天哉くん、大丈夫かな…と少し心配したが、私の百倍以上強い、彼はすっごく強いから大丈夫、私が心配することないと自分に言い聞かせた。
事務所のヒーローと共に保須市のヒーローさんたちのところへ向かう。
きょろきょろと天哉くんの姿を探したの、だが……。
天哉くんの姿が見当たらない。
「天哉くん……?」
天哉くんの研修先のマニュアルっていうヒーローさんも慌てて探しているみたいだった。
保須市って……もしかして。どんどん嫌な予感がしてくる。
もしかして、今暴れてる敵は、ヒーロー殺しと繋がっているんじゃないか……?もしかしたら、天哉くんは、1人でヒーロー殺しに敵討ちをしに行ったのではないか……?たった1人で、誰にも言わないで……。
天哉くんが、危ない。
「すみません!ちょっと大変なんです!!天哉くんが!危ないかもしれない!私こっち行きます!よかったら来て欲しいです!!」
「あまねちゃん!?」
「おっ、お願いします!じ、時間が無いんです!!すみません!」
現地につく前に走り出す。何の計画もなく、路地裏へと。
足が、勝手に。