第9章 英雄の後ろ姿
ヒーロー事務所丸田は、対敵は専門ではなく、地域奉仕を主としており、パトロール、ゴミ拾い、地域の方との交流が仕事の大半だとか。
父はこの事務所に務め、対敵でも活躍を見せ、一時期この事務所もとても話題になっていたそうだ。
「じゃあ質問、何かあるかな。」
「すみません、ひとつ、聞きたいことが。」
「うん、なんだい?」
一度口を開け、少し躊躇ってから声に出す。
「……ち、父は、どんな戦い方をしていたんですか?」
「カインドネス?そうだなぁ……彼は特殊だったからねぇ。世論でもいいことあまり言われてなかった、難しい戦い方だから……。」
「そ、そうなんですか!?」
カインドネス、それは父のヒーロー名だ。優しさ、という意味で、やっぱり父にぴったりだ。
でも、世論でいいこと言われなかったって……。ちょっと、やだな……。
「まぁ、主に過激な思想の人からね。なんか、敵に甘いって。」
「甘い?」
丸田さんはお茶を飲みながら答えてくれる。懐かしそうな、少し寂しそうな目をして。
「あいつさとにかく人好きで、なんていうかな……天然人誑しって感じでさ。正義の反対は悪じゃなくてもう1つの正義なんだって……いっつも言ってて、」
「……。」