第9章 英雄の後ろ姿
その痛みは、嫌なほどわかる。そんなことされたら恨むし憎む。悔しくって辛くって悲しい。
でも、私は……。天哉くんの痛みは私のとは違う。だから、なにも言えない。言ってあげることができない。口からでてこない。
「天哉くん……えーっと、私、新幹線初めてなんだ!楽しみだなぁ!天哉くんは新幹線、初めて?」
「いや、」
「あっ、そー、だよね。」
会話が続かない。もともとコミュニケーションが下手だから凄くぎこちなくなる。
「あ、あの!」
「ん?」
「……。ごめん……。なんでも、ない……。」
新幹線の中でも無言を貫きとおした。初めての新幹線でウキウキしたいのに…。地獄かここは!新幹線では、ずっと、太ももの上に手をおいて、ただただ駅に着くのを待っていた。私の馬鹿!
「じゃ、じゃあ、私、ここになんか、お迎え来てくれるらしくて、すごいよね!す、すっごく優しいよね!」
「じゃあ、お互い頑張ろう。」
「う、うん。じゃあね……。」
結局何も声を、掛けてあげられなかった。