第8章 〈番外編〉ヒヨコをプロデュース
安藤は、酷く不器用だ。不器用で容量が悪くて、頭もそれほど良くないし、運動神経も良くない。
それでも、自分が不器用だと分かってなお、真正面からぶつかっていこうとする。
似ているわけないのに、そんな訳ないのに、一瞬、安藤のその真っ直ぐさに、俺の憧れのヒーローの姿が重なったような気がした。
興奮気味の安藤に気圧されたのか、俺はずっと小さい時からの悩みをポロリとこぼしてしまった。
口に出すつもりなんか、弱音を吐くつもりなんか、無かったのに。だって弱音なんか吐いたら、漢じゃないだろ?
「…俺、個性地味で、ヒーロー向きじゃないんだよな……っあ!わり、なんでもねぇ、かっこ悪いよな、わすれてく」
「そんなことない!!」
そんな、ポロリとこぼした一言に安藤は反応し、必死に否定してくれた。
それは、個性が地味、ということに向かってなのか、かっこ悪い、ということに向かってなのか。
「あのね、体育祭!見たよ! !鋭児郎くん、すごく凄くかっこよかった!!カッチーンって!バキバキバキって!!」
「ちょっ、興奮しすぎ、だろ…。」
語彙力は無いものの、一生懸命伝えようとしてくれるのはとても良くわかった。