第7章 敗けて勝ってその後で
発表が終わると私は急いで席に戻った。顔の火照りが冷めるように手をパタパタする。
「お疲れ様、素敵な名前ね。」
「つゆちゃん!ありがとう!」
本当は、大事な大事な人の名前が由来。言うのはなんかはばかられるかな、と思って言わなかった。
「緑谷?いいのか、それで?」
「一生呼ばれ続けるんだぞ?」
ぼーっとしてたら出久くんの番になっていた。
出久くんのボードをみると、
「えっ」
【デク】
「ある人に意味を変えられて、僕には結構の衝撃で、嬉しかったんだ。」
デク、はずっと、勝己くんに馬鹿にされて呼ばれていた名前。私が避けていた、気を使ってしまっていた名前。
嬉しくなるべきなのに。
私は胸がツキンと痛くなった。
ある人って言うのは、私じゃない。なんていう、そんな変なことで。なんだろう、この気持ち……。そのある人に対する、嫉妬……?なんて勝手で傲慢なんだろう。
ずっと思っていたのに、私は、デクって呼び名の意味さえ変えてあげられなかったんだ。凄く簡単なことなのに、変えようと考えたこともなかった。
ずっと好きだったのに、私は…。
心に黒いものがドロドロと入ってきそうになって、首をブンブン振って強制的にシャットアウトした。