第7章 敗けて勝ってその後で
しかし、扉を開けても、そこには誰もいなかった。
「ありゃ……いちばんのり……。」
ちょっとホッとしたような、拍子抜けしたような。いそいそとカバンを自分の机に置く。自分の席は、やっぱり安心する。椅子に座ろうとしたその時
「お。」
「びょっ!」
「……安藤か。」
後ろから声がした。と思って振り返るとそこには、
「と、ととと……」
轟くんが、いた。
轟くんに顔を向けたまま顔が青くなっていくのが自分でもわかる。
あ、挨拶、挨拶しなきゃ!あれ、なんて言うんだっけ?
轟くんにはまだ物凄い苦手意識があり、まだ、少し怖かった。
少し、体育祭のことがフラッシュバックする。
恐らく体育祭で大活躍したであろう彼と、まっったく、活躍どころか存在も表せていないような私がちょっとでも教室に2人きりというのは……宇宙の摂理に反しているのでは!?
もうしわけがねぇ!!
(その結論にたどり着くまで、およそ0.2秒。)
「おお、お、おはよ……う、ござい、ます!!」
「安藤?」
その結論にたどり着いた私は、教室から走って逃げ、トイレへ逃げ込んだ。