第7章 敗けて勝ってその後で
「泣いて、良いよ。まだ、ヒーローには程遠いけど、僕、胸ならいくらでも貸せるから。」
出久くんに、抱きしめられている。そう悟ったのはその3秒後ぐらいだった。
普段だったらそりゃあもう、顔が赤くなるとかそういうレベルでなく、大惨事だったろう。
でも今は、こっちもこっちで大変だ。1度驚いて目を見開いたけど、それからはただただ彼に縋った。
「……うぅ、うわぁぁん!わあぁぁん!くや、しい…!!ぐやじい!」
出久くんに強く抱きしめられ、私は泣き続けた。
出久くんは小柄な方だと思っていたけど、思っていたより大きくて、私の涙でぐしょぐしょになった顔はすっぽりと隠れて、私は凄く、安心した。
出久くんは、私が泣き終わるまでずっと、そうしていてくれた。最後の方は出久くんも一緒に泣いていた。
彼にもきっと、いろいろあったんだ。悔しかったんだ。
出久くんは、やっぱり私のヒーローで、私も、いつかこんなふうに、こんなヒーローになりたいと思った。いつか私も出久くんの辛さを少なくしてあげられたらと。
その後、私は出久くんと一緒に家に帰った。
家に入るのが少し怖かったけど、入ってみるとみんなが案外いつも通り迎えてくれた。
いつもと同じに暖かく迎えてくれて、それだけで幸せで、おなかいっぱいだった。