【イケメン戦国】お気に召すまま【修正完了しました】
第6章 ENVY
そして漸く、彼女付きの女中頭だと思い当たった。
妙齢のその女中は面倒見がよく、まるで母の様だ、と千花が話していたか――
また部屋から出てきた所を、捕まえる。
「ちょっと、いい?」
「これは家康様!おはようございます」
「おはよう、千花は…」
彼女の名前を出した瞬間、女中頭は下世話めいた笑みを浮かべた。
「それがねぇ、家康様?
千花様ったら、昨日はこちらにお戻りにならなかったんですよ!
何処に行かれていたと思います?」
またひりひりと、胸が痛むような、背を走り抜ける寒気の様な、嫌な感覚。
俺のそんな様子に気づくこともなく、女中頭は存分に勿体ぶって、漸く答えを口にした。
「天主様のお部屋で過ごされたんですよ!」
これで彼女も安泰だ、幸せにして貰えるに違いない、信長様も漸く身持ちを固める気になられたのだ、等と宣う彼女の声が、どこか遠くで聞こえる。
「今際になって漸く、朝のお支度の様でばたばたしておりまして…
これにて、失礼致します」
足早に、千花の着物を抱えて天守へと去っていく彼女を見送るしか出来ず、立ち尽くす。
数々の悪い予感が導き出す、答えは一つしかない――
彼女は、信長様の物になったのだ。