【イケメン戦国】お気に召すまま【修正完了しました】
第2章 burn
たったっ、と、自分の足音だけが響く城内を足早に駆け抜ける。
上階に上がれば上がるほど、人気の無くなる城の中。
ここまで武将様達に出くわさずに済んでいるのは、せめてもの救いだった。
こんな混乱した姿をみせてしまっては、無用な心配をかけるだけだ。
――覚悟して来るように、だ、なんて。
家康の言葉かぐるぐると頭を駆け巡る。
思えばこの時代に留まる、と決めた時から、覚悟なんてとうに出来ている筈だった――
――なのに。
彼がもしかして、私の事を?
なんて考えに至った瞬間、身体中が火照ったように熱くなり。
いても立っても居られなくなって、逃げるように帰ってきてしまった。
現代にいた時は彼氏だって、好きな人だって、それなりに出来たこともあるし。
年相応に、振ったり振られたりそれなりの経験もある。
それでも、こんなに嬉しかったり、恥ずかしかったり…
…怖かったり、するのは彼が相手だからに他ならなかった。
またふわり、と立ち上がる香りにくらり、とする――香っている間、相手の事しか考えられなくなる、なんて…自分の言葉が呪縛のようだ。
袂に入れた匂い袋をきゅっと握る。
すると芳香の向こう、食欲をそそる夕餉の香りを見つけ、素直なお腹が音を立てた。
――腹が減っては戦が出来ぬ、だよね!
なんて、言い訳を携えて。
私は部屋に戻ろうとしていた身を翻し、広間へと向かう事にしたのだった。