【イケメン戦国】お気に召すまま【修正完了しました】
第3章 aromatic
「いえや、す…!っと、」
灯台もと暗し、とはこの事か。
廊下とは反対側、外を渡る縁側で、壁に凭れてうたた寝する家康を漸く見つけた。
余程疲れているのだろうか…見慣れない無防備な姿にきゅん、としながら。
起こさないように傍を離れ、厨に戻る。
そして甘味に合わせようと、白湯を入れた。
湯が沸いて、盆に持ち傍に戻っても、家康はまだ目を閉じている。
心地よい秋風はしかし、この時間ともなると少し冷たい。
起こさなければ、と手を伸ばす、寝顔がいつもより幼く見えて、どきどきと胸が高鳴る――思わず可愛い、と小さく呟く。
そして触れる、その瞬間。
家康の目がぱちり、と開いた。
「…寝込みを襲われる趣味は無いんだけど?」
「わわ、ごめん…!
肌寒くなってきたから、そろそろ起こそうと…はい、白湯だよ!」
湯呑みを渡すと、礼も言わずに家康が受け取り、口をつけた。
余程喉が乾いているのかな、それとも何か、苛立ってる…?
顔色を伺うように覗き込むと、ちらり、と少し睨まれた気がする。
…どうやら、後者らしい。
先程までの自信がへなり、と崩れた私は、用意していた箱を後ろ手に隠そうとした。
しかし、家康はそれに気づき、箱を持った私の手をとる。
「…くれないの」
「あの、疲れてそう、だから…」
「疲れてる時こその甘味でしょ」
「食べてくれるの?」
家康はその問いには応えず、箱の蓋を開けた――