【イケメン戦国】お気に召すまま【修正完了しました】
第2章 burn
私の声に、家康が立ち止まり。
ややあって、ゆっくりと振り向いた。
真っ直ぐとこちらを射抜くような視線、しかし頬が微かに赤らんでいる事に気付く。
「…そんな訳、ないだろ」
いつもより小さなその声はそれでも、しっかり私の耳に届いた。
そして家康はぱっと身を翻し、去っていく。
その後ろ姿ににやにやと、緩む口元を押さえられない。
家康が触れた頬が、額が、熱を持ったように熱く、だけどその温度が心地良い。
そうして一頻りにやけた後…皆が隠れて見ていた事を、私は漸く思い出したのだった。
「そろそろ、顔を見せてくれてもいいんじゃないですか」
「ククっ、流石、気付いていたか」
「光秀さんまで来ているとは思いませんでしたよ…
まさか、信長様も何処かに居るんじゃないでしょうね?」
くつくつと含む様な声を上げて笑う光秀は、家康の言葉に、さらに笑みを深めた。
「まさか。俺はお館様に、お前の事を報告するよう言われ来た迄だ」
「えぇ…体良く報告して下さいよ、無事恋仲になった、だとか」
「嘘を報告しては、俺の首が跳ねられるだろう」
「それはまぁ…違いありません、けど」
不服げに口を尖らせながら歩く家康を、未だ笑いの止まらない光秀が見送る。
明日の軍議で、何を言われたものやら――と考えながらも、しかし家康の機嫌は頗る良い。
これからの恋路を予感させるように、暗い夜道を月が照らしていた。