【イケメン戦国】お気に召すまま【修正完了しました】
第6章 ENVY
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どたばたと煩い足音に鼓膜を揺らされ、ゆるり、と目が覚めた。
開けたばかりの目に、赤く鋭い夕の陽が刺さる。
どうやら気付かぬうちに、随分長い間寝入っていたらしい。
忙しない足音は案の定、自室の前で止まった。
誰だろう、四方や、千花では無いだろうし――がたり、と無遠慮な大きな音を立て、襖が開け放たれる。
「家康!寝こけてる場合じゃないぞ!」
「…政宗さん?なんです、血相変えて」
「千花の姿が見えねぇっ…!」
「は?いや、まだ夕の刻でしょう…?」
「これを見ろ!!」
政宗さんがごそごそと懐から取り出した物を、よく見ようと重たい身体を起こす。
確かに、それはよく覚えのある物だった――
「これは、千花の、」
「やはりそうか…
市中見回りを命じられていた、光秀の家来が見つけたそうだ」
少し砂まみれになった、山吹色の小袋は確かに自分が千花にやったものに違いなかった。
すっと、体の冷えるような感覚が走る――
「ひとまず城に向かうぞ、ほら!」
政宗さんに肩をゆすられ、なんとか頷き返して。
今にも震え出しそうな足に一発いれて、漸く城に向かい、駆け出す。
どうか杞憂であってほしい、誰の物であったとしても、二度と会えないなんて考えられない――
身体を覆うような不安を拭うように、全力で、城への道を駆け抜ける。
夕日は、もうじきに西の空へ沈みゆこうとしていた。