【イケメン戦国】お気に召すまま【修正完了しました】
第6章 ENVY
その時、近づいてくる足音が聞こえた。
自室の前に座し、失礼します、と声をかけてくる。
家老の石川は、人質時代も共に仕えてくれた、旧くから馴染みの家臣だった。
「殿…
千花様が来られましたが、お言い付け通りお引き取り頂きました」
「…わかった」
何をしに来たのだろう。
彼女の事だから、俺の気持ちも弁えず、出迎えるという約束でも果たしに来たのだろうか?
「…宜しかったのですね」
「そう命じてあっただろ、それでいい。もう下がれ」
足音は去っていく。
きっと全て見通しているであろう石川の言葉は重く、またこの胸の空いた所を占める。
これでいい、訳無い。
でも、どうしようもないだろ?だってもう、彼女は彼のもの。
俺が手をつける事なんて出来ない。
ずっと大事に壊れ物に触るように、少しずつ距離を縮めてきたのが仇になるなんて――そんな風に後悔しても遅いのだと、充分、知っている。