Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第7章 恋慕
窓の外を眺め続けるエミリの様子がいつもと違う。その事に気づいたペトラは、聞いてはいけなかったことなのかもしれないと慌てて口を閉じた。
一見いつも通りだが、エミリの表情は少し憂いを帯びている。
駄目と感じつつも、一体何があったのか……すごく気になった。
「……エミリ、ごめん」
「え、何で謝るの?」
「……聞かれたくない事だったのかもって……」
誰しも、話したくない事の一つや二つはある。
申し訳無さそうに謝るペトラに、エミリはいつものように微笑み首を振る。
「大丈夫」
「……そう? なら、いいんだけど」
「でも、話したくなったら……その時は聞いてくれる?」
「もちろん!」
この半年の間に、二人の仲は急速に深まった。
行動する時は殆ど一緒で、訓練をする時もそうだった。共に調査兵として壁外で戦い、その間もお互いの身を案じ、会えば手を取り合い無事を喜び合った。
エミリ自身、兵士になる前はフィデリオ以外に友達も出来ず、訓練兵団に入ってからも、最初から調査兵を目指していたエミリとは馬が合わないという者もいたため、こんなにも仲の良い女の子が出来たのは、ペトラが初めてだった。
ハンジからも『二人はすっかり親友だね』と言われる程、エミリとペトラの絆は強く強く結ばれつつあった。
「ねぇ、エミリ……」
帰り道。夕日が街を照らす中、ペトラと並んで兵舎へ帰る途中だった。ピタリと立ち止まるペトラに釣られ、エミリも足を止める。
「何?」
「……エミリに何があったのか分からないけど……でも、何でも話を聞くから。だから、一人で抱え込んだりしないでね」
さっき見た、エミリの表情がペトラの頭の中から離れなかった。きっと、余程のことがあったのだろう。
それでも、話すことで心が軽くなる時もあるし、私だったら誰かに聞いてもらいたいと思うから……
「うん。ありがとう、ペトラ」
何かあったらお互いを頼る。
それは、言葉にせずとも二人の小さな約束となった。