Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第5章 壁外調査
「リノ、ずっとエミリのことを心配していたようだよ。ここに着いてから、落ち着きがなくてね。ずっとこの辺りを歩き回っていたよ」
「……リノ」
「この子、初めて私達の話を聞いてくれたんだ。私がこの子に会った時は顔を逸らされるんだけど、さっきはそれが無かった。エミリが大切なんだね」
人間の言うことを聞かなかったリノが、エミリの心配をし、ハンジの言うことを聞いた。それはリノにとって大きな成長でもあり、エミリに強い信頼を寄せているということだ。
それなのに、あんな状況だったとはいえリノをひとりにしてしまった。それがとても、申し訳なかった。
「……リヴァイ兵長に、リノを頼むって言われたのに」
「え、リヴァイに?」
初めてリヴァイと話した時、去り際に言われた『リノを頼んだぞ』という言葉。
リヴァイもリノが人に懐かないことを知っており、また心配だったのだろう。だから、初めて心を通わせた人間であるエミリに、リヴァイはリノを彼女に託した。
「なのに……私はリノを放ったらかしにして」
壁外に出るということは、相棒である自分の馬の命も預かるということ。そんな大切なことをエミリは忘れていた。
巨人に対する憎しみや怒りで、リノのことをしっかりと考えていなかった。
この子は大切な相棒なのに……。
「……リノ、ごめんね」
エミリは涙を流し、リノに額をくっつける。
リノは、エミリの頬に伝う涙をペロリと舐め、自分の顔をエミリの頬に寄せ付けた。
そんなエミリとリノの触れ合いに心が温かくなるのを感じたハンジは、エミリの頭を優しく撫でて微笑んでいた。