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Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人

第20章 約束




「どう、して……」


いつだって、エミリが涙を流す切っ掛けをくれるのは、リヴァイの存在と彼が紡ぐ言葉。

一人で抱え込んでいれば、抱き締めてずっとそばに居てくれる。

どうして、そこまでしてくれるのだろう。
そんな疑問が頭の中をぐるぐると回って、エミリを追い立てる。


「……わたし、の……わがままに、なんで……」


怒られて当然のことをしているのに。
見放されたって仕方が無いほどのことをしているのに。

どうして発せられる声は、怒声などではなくこんなにも穏やかで優しいのか。


「……ふっ……うぅ……」


もう、意地っ張りな自分を保つことなんてできなかった。
リヴァイの服をぎゅっと掴み、彼の胸に顔を埋め、涙を流し続ける。


魔法なんて、存在しない。
奇跡なんて、そう簡単に起きたりしない。
夢物語が、現実になるなんてことは有り得ない。

なのに……



「……そのルルってガキとの約束は、俺が引き継ぐ」



それなのに、一人で抱え込んで、助けを求めていたら駆けつけてくれた人類最強の兵士長は、



「だから、お前はあのガキ共連れて先に戻ってろ。そして、これはお前と俺の約束だ」



本に登場したリュディガーと同じ、王子様のように格好良くて、



「ルルは、俺が必ず助ける」



このまま離れてしまうのが惜しいほど、とても温かくて優しい、素敵な男性だった。



「リヴァイ……へ、ちょう……」



エミリの頭に置かれた手。それが離れると同時に、エミリを包み込んでいた温もりも共に消える。

涙で滲むエミリの視界に映るのは、小さくなっていくリヴァイの背中だった。


止まらない涙。エミリの両目から溢れる涙は、ポタポタと地面に落ちて行く。


「おねえちゃん……」


後ろから聞こえる、子どもたちの声。それを耳にしたエミリは、鼻を啜って涙を拭う。


(……泣いてる場合じゃ、ない)


見つかった打開策。
開いた扉があるならば、進まなければ……


「みんな、行こう……!」


子どもたちの手を取り、エミリは元来た道を戻る。
胸に込み上げる熱い想い。頬に集まる熱を振り払い、エミリは走った。



実験開始まで、あと10分。
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