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Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人

第20章 約束


エミリの様子がおかしい。
彼女の周りに居る誰もがそれを感じ取っていた。

最近、ずっとぼーっとすることが増え、話しかけても気づくことがない。訓練中も、食事中も、仕事中も、雑談中も、どこか上の空だった。


6月となり、冬に壁外調査ができなかった分のつけが、この季節に回ってくる。
しかし、今のエミリを見ている限り、彼女を壁外に出すのはかなり危険だ。

次の壁外調査は三週間後、それまでにエミリの変化の原因を突き止めなければならない。


そう思って話しかけても、「なんでもない」の一点張り。本人の口から聞き出すのは無理そうだ。


「……エミリ、本当にどうしたんだろう」


フィデリオとオルオと共に訓練後の自主トレーニングに励んでいたペトラが、近くの大岩に腰掛けボソリと零す。


「さあな。あいつの考えてることなんてわかんねぇよ」


水分補給をとりながら肩をすくませるオルオ。ペトラが聞いても無理なら尚更俺は駄目だと諦めの表情だ。


「今日だって、また木にぶつかりそうになってたし……」


先程の訓練中、いつものように立体機動の演習を行っていた時だった。
またぼーっと意識が逸れていたエミリは、ペトラに声をかけてもらわなければ木に激突していだろう。

いつもであれば、人一倍頑張らなければいけないんだと集中しているのに、最近はそんなエミリらしさが全く見られないのだ。

そして今も、訓練後は必ずペトラたちと共に自主トレーニングに励むエミリが、どうしても完成させたい薬があると言って、ここ数日の間はずっと与えてもらったばかりの仕事部屋に篭もりっぱなしだった。


「ファティマ先生に大量の課題出されたとか」

「その程度でエミリの集中力が途切れるわけないでしょ。きっと、何かあるのよ……」


エミリは、わかりやすいほど単純な人間だ。元々、嘘をつくことが苦手ということもあるが、素直だからこそ、それが自然と表情や動作にはっきりと表れる。

何より、いつも一緒にいるからどんな些細な変化でも今なら見抜くことが出来るのだ。

そして、感じた。今のエミリは、危険な状態であると……。

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