Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第19章 贈り物
穴が幾つも空いた白いその物体は、笑っているのか無表情であるのかわからない。
ただ、恐怖心を煽るだけのそれ──骸骨の存在に、再び体中に鳥肌が立った。
何故こんなものがここにあるのかわからず、エミリは体が震える一方である。
(……やっぱり、出よう。雨なんて、気にしてる場合じゃない)
危険を察知したエミリは、入ってきた扉へ走り出そうと踵を返す。しかし、その足が動くことはなかった。
コツ、コツ……
謎の足音。誰かがこちらへ向かっているのだと瞬時にそれから察し、再び困惑する。
遭遇してはならない。すぐにそう判断し、仕方なく先を進む。とにかく身を隠せる場所を探した。
足音をなるべく鳴らさぬよう、細心の注意を払う。
遠ざかっていく出口に不安を感じながらも、この危機的な状況を凌げる場所はないか探し回る。そんな時……
(っ!? あれは……)
発見した一つのドア。
慌てて駆け寄りドアノブを握る。
中に何があるのか、誰がいるのかもわからない。
それでも入るしかないと意を決して、ドアノブを捻った。
キィ……
再び気味の悪い音が小さく鳴り響き、冷や汗を流しながら部屋の中を覗き込む。
しかし、誰かがいる気配は感じられない。
エミリは、念のためにと持ち歩いているマッチに火を灯し、部屋を少し明るく照らした。
棒をつまみながら、部屋の中を徘徊し探る。そこでわかったことは、ここが研究室であるということだ。
実験道具と多くの資料からそれを察した。
一つひとつ手に取り、何についての研究を行っているのかを調べていく。
「……これはっ!」
ここで行っている研究。それは、エミリと同じ薬についてのことだった。
「どういうこと?」
マッチを近づけ資料のページを捲り、更に研究内容に目を通す。そうしている時、ふとその資料の隣に置かれている、別の資料が目に入った。
「これは……」
気になったエミリは、それを手に取って一枚目を捲り内容を確認した。
「…………えっ……ちょっと、待ってよ。なに、これ……」
エミリは、言葉を失い立ち尽くす。あまりの内容に呼吸をすることすらも一瞬忘れていた。
大きな落雷と共に空が強く光る。
もしかしたらそれは、これから起きる事件の予兆を示しているのかもしれない。