Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第18章 分かれ道
「今回の企画考えたのフィデリオだって言ったら、お前はどう思うんだ」
「……え」
イライラに任せてケーキを貪っていると、いつの間にか隣に立っていたオルオの言葉に思わずフォークを止めた。
「…………いま、何て言った?」
「お前耳悪いにも程があるだろ」
「うるさい。いいからさっさと教えろ」
「何で命令形なんだよ!!」
相変わらずの態度に抗議を上げながらも、仕方ないともう一度同じことを繰り返す。
「だから、このパーティの言い出しっぺは、フィデリオなんだよ」
嘘だと声を上げたかった。
だけと、オルオは見栄を張ることはあっても余計な嘘は付かない主義だ。他人のことなら尚更。
だから、オルオのその言葉は本当なのだろう。
「……何で、フィデリオが」
「俺が知るわけねぇだろ。ていうか、俺よりもお前の方が、その理由わかるんじゃねぇの?」
最後に幼馴染なんだからと付け足し、そのままオルオはペトラたちの方へ歩いて行った。
正直、信じられない。
てっきりこの企画を考えてくれたのは、ペトラや二ファ辺りだと思っていたからだ。
それがまさか、フィデリオが発案者だとは予想もしていなかった。
「……ほんとに、何なのよ」
見送りも励ましも無かった癖に、何でこういう美味しいとこだけ持っていくのか。
(ああ、そうだわ。昔からあいつはそういうの上手かったわね)
いつもいつも、美味しいとこ取りをする。小さい頃からずっとそうだ。
ムカつくことの方が大半だが、それをされて嬉しいこともあった。
今回は、後者。
「なんか、わたし……かっこわる」
何度も落ち込んで、迷って、その度に自分を取り巻く様々な人たちが、そんな自分の隣に居てくれる。
このままでは、いけない。
誰かを頼ってばかりでは、成長なんてできるはずがない。
顔を上げれば、仲間たちが楽しそうに笑い合っている。
ふざけて、笑って、またふざけて、笑って……
そうやって仲間と過ごす時間が、とても愛おしい。
そんな気持ちをくれる皆が、大好き。
大好きだから、この先もずっと彼らと共に歩んで行きたい。
(…………私、ほんとに大バカだ)
答えなんて出ていたのに、何を迷っていたのだろう。
そんなもの、一つしかない。
(私が進む道。それは……────)