Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第5章 壁外調査
「右前方、8m級接近!」
門を出て早々、巨人が兵士を狙って走って来る。
巨人を見たのは"あの日"以来。
やはり、改めて巨人を目にしてもエミリの中に恐怖は無かった。むしろあの日と同じく、とても冷静だった。
「……あ、れが……巨人」
「ペトラ!」
近くで馬を走らせるペトラは、初めて見る巨人に恐怖で震えていた。人間よりも遥かに大きなそれに少し動揺している様に見える。
「ペトラ! しっかり!!」
「っ……うん!」
この辺りの巨人は、援護班が支援する。まだヤツらと戦う必要はない。しかし、巨人に慣れるのも時間と気力の問題だ。
入団してから一ヶ月の間で、エミリは、ペトラやオルオ達だけでなく、他の区出身の同期達とも親しくなれた。
正直、自分よりも同期達の方が心配だった。あの日の惨劇を受けたのは、101期の中でエミリとフィデリオだけだったからだ。
旧市街地。そこを抜けたらこの二ヶ月間、身体で覚え頭に叩き込んだ長距離索敵陣形の出番だ。
援護班が支援できるのもここまで。ここからが本当の戦いだ。
「長距離索敵陣形!! 展開!!」
エルヴィンの指示で兵達が展開して行く。
新兵の大半は、伝達に設置された。
エミリが所属しているハンジ班は、三列三・伝達。
すぐ後ろのナナバ班所属のペトラは、三列四・伝達。
「それじゃあ、ペトラ。気をつけて!!」
「う、うん……エミリもね……!」
お互いの健闘を祈り、ペトラと別れた。
エミリはしっかりと前を見据え、リノを走らせる。