Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第4章 相棒
エミリの相棒となったリノが、彼女の方へ擦り寄る。エミリは、それに嬉しそうに笑ってリノの名を呼び、優しく撫でていた。
その微笑ましい姿に、リヴァイはリノがエミリを選んだ理由が少しだけ解ったような気がした。
「……変わった奴だな」
「え」
リヴァイは一瞬、フッと微笑む。しかし、エミリはそれに気づいていない。
『変わった奴』
それは自分に言っているのだろうか。だとしたら、一体何処が変わっているのだろう。
エミリは、疑問符を浮かべ、ポカンとしながらリヴァイを見上げている。
「あの、兵長……?」
「エミリ……だったか」
「あ、はい!」
「そいつを……リノを頼んだぞ」
リノを見ながらそう言ったリヴァイは、エミリの頭にポンと手を置いて行ってしまった。
「え」
まさかリヴァイにそんなことをされるとは思わず、エミリは、素っ頓狂な声を出した。
リノが人間に懐かない理由。それは、そもそも人間が馬を壁の外へ出したことが原因でもある。巨人と戦うために、自由のためにそれは必要なことだ。
それでも、リノから見たら人間も脅威に思えたのかもしれない。
リノに触れようとした兵士を、警戒しながら敵意を持った瞳で見ていたことを覚えている。
しかし、エミリにはそれが無かった。今リノを任せられるのは、彼女しかいないのだ。
「何だったんだろう……」
エミリは、リノと顔を見合わせる。
入団式で姿を見かけた時は、怖い人なのかと思っていた。しかし、あの日助けてもらったことや、今回エミリに見せたリヴァイの表情や瞳は、とても優しく温かいもので、そこからは彼の人柄を少しだけ感じた。
(……兵長って、実はとても優しい人なのかも)
リヴァイが歩いて行った方向を見ながら、エミリは頭を押さえ暫くずっとそこに立っていた。
リヴァイが手を置いた場所は何故かとても温かかった。