Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第13章 勉強
兵舎に戻ったエミリは、今後のスケジュールを立てていた。
現在は7月初旬。薬剤師試験は1月中旬から2月中旬に行われる。専門の学校に通っておらず、独学で薬学について学ぶとなると時間もそうだが、相当な気力が必要だ。うかうかしてられない。
「う〜ん……取り敢えず寝る時間は22時、起きるのは4時で……」
ペンを手に紙とにらめっこをしながら、時間配分を決めて行く。
「6時からはいつも通りペトラ達と鍛錬して……7時は朝ご飯で、合同訓練が8時半から11時半までだから……」
兵士と両立するというのであれば、訓練は何がなんでも外せない。ペトラ達との自主鍛錬だって休む訳にはいかない。しかも四人の中で一番ビリなのはエミリだ。受験する前に巨人に食われて死にました、なんて結末は御免だ。
「……午後の訓練は14時半まででしょ、その後四人でやる自主鍛錬が15時半までだから、それからお風呂に入って18時まで勉強して夕飯で、それから」
「ちょっとエミリ、それは根詰めすぎじゃない?」
ぶつぶつと小声で喋りながら予定を組んでいると、ハンジが隣りからひょっこりと顔を出す。
ここはハンジの研究室。エミリは彼女から仕事を頼まれさっきまでその手伝いをしていた。
今は休憩中だったため、こうして空き時間を使って勉強の計画を立てていたのだ。
「時間が無いって気持ちは解るけど、無理をすれば良いってもんじゃないんだよ?」
「……それは、そうですけど」
ハンジの言い分も解るがどうしても焦ってしまう。エミリの勉強時間は限られている。どうしても、訓練以外の空いている時間に勉強するしかないのだ。
「今からそんなに不安になって頑張りすぎたら、受験する前に倒れちゃうよ! まだ試験は先なんだから、今は余裕を持って勉強しなよ」
ポンポンと優しく背中を叩かれる。
そこでふと疑問が浮かんだエミリは、資料をまとめるハンジに質問を投げる。
「あの、ハンジさん」
「んー?」
「ハンジさんって、たまに怪し気な薬とか開発してますけど……一応、薬学の知識は持ってるんです、よね?」
質問しながら思った。何故もっと早くこの事に気づかなかったのか。
ハンジが作る薬はエミリの目指すそれとは違うが、一応薬に違いはない訳だ。