第2章 転生トリップ
あれ……あれ………?
なんかおかしくない…?
「水樹ちゃん、お誕生日おめでとう!」
目の前でにこにこ嬉しそうに微笑む見知らぬ女性。
「ほ〜ら、プレゼントだぞ〜」
でっかいクマのぬいぐるみを持ちながらにこにこ笑う見知らぬ男性。
そして目の前に3本のローソクが刺さった大きなケーキ。
チョコレートのプレートには「水樹ちゃん おたんじょうびおめでとう」の文字がある。
知らない女性と男性のはずだった。
それでも私の頭にははっきりとこの2人の記憶があった。
混乱しているはずの私の口は、思わずと言った感じでこう言葉を発していた。
「ありがとーおとうさん、おかあさん!」
ーーーーーー
何がなんだか分からないまま時間が過ぎていった。
あのあとケーキを食べながら必死に記憶を遡って行くと、たしかに私は2X歳の社会人で昨日もいつもと変わらず過ごしいつもと同じように寝た記憶があった。
でもそれとは別に、もうひとつの記憶もある。
私の名前は水奈月 水樹で、この男女は私のお父さんとお母さんだという記憶。
同時に全く違う記憶があること、名前も両親も違うということ。
この2つの認めたくない現実は、私を混乱に陥れるには十分な威力を持っていた。
さらにもうひとつの記憶の中のある光景もそれに拍車をかけていた。
どこかで見たことのある赤い瞳にミルクティー色の爆発頭に、気弱そうな緑のもさもさ頭の子どもたち。
そして2人と見たテレビに映る、あまりにも画風が違いすぎるガチムチの金髪の男性。
最近私がハマっていたマンガに出てきたキャラクターにあまりにもそっくりな3人。
アニメにもゲームにもなったそのタイトルはーー
「(僕のヒーローアカデミア…)」