第9章 人里離れた山奥へ
その冷たい空気を割るかのようにモブリットさんが話をはじめた。
「勿論今朝の段階からエルヴィン団長、ピクシス司令、全調査兵団に至るまで状況は共有されています。
中央憲兵は逆に我々から監視されるハメになってますから
そう下手な真似はできないはずです。
とはいっても形を変えてこちらを探る方法はいくらでもあるでしょう。
今は何が敵かわからない状況です。
今日、ここに来るときも二手に分かれたり二重尾行をしてきました。
まだ、ここはバレてないと思いますが・・・」
「・・・それでエレンの実験をよそうって考えてんのか、ハンジ」
「あぁ、エレンの巨人の力が明るみになった時から中央の
「何か」がエレンを手中に入れようと必死に動いてきた。
しかし、今回の騒動以降はその切迫度が明らかに変わってきている。
それまで踏み込めなかった領域に土足で入ってきて兵団組織が二分しかねないようなマネをしでかした。
それも壁の中のすべてが不安定なこの時期にだ。
つまり、我々が危惧すべきことは壁の外を睨んでいる間に背後から刺されて致命傷を負うことだ。」
「・・・それで?俺たちは大人しくお茶会でもやってろって言い出す気か?」
「室内で出来ることはまだ色々あるよ!編み物とか・・・
今だけ頼むよ」
するとリヴァイ兵長は少し怒りをこめ
「「今だけ」だと?それは違う。逆だ。
時間がたてば奴らが諦めるとでも思ってんのか?
ここはいずれ見つかる。
逃げてるだけじゃ時間が経つほど追い詰められる。」
その通りだった。
わたしはリヴァイ兵長を見つめる。
するとリヴァイ兵長もこちらに目を向けた。
そして、ハンジ分隊長の方をもう一度向くと言葉を続けた。