第6章 僕が守るから…
景勝「……お礼を言われるようなことは……してない」
「えっ?」
緊張の糸が解けたのか、ぽつりとつぶやいた。
景勝「……ごめん。僕一人じゃ……あなたを守り切れなかった……」
「景勝くん……」
景勝「守るって言っておきながら…… 実際には、守られた。その時、改めて思ったんだ……」
景勝「僕は……父上の様に、強くはなれない……って」
「そんなことないよ……! 景勝くんが居なかったら、私はとっくに斬り殺されていたもの」
「だから、そんなに落ち込まないで」
私が言っても励ましにも何にもならないことは
分かっていたが、言わずにはいられなかった
景勝「……ありがとう」
謙信「ああ。私も、お前は良くやったと思うぞ、景勝」
景勝「父上……」
謙信「いかなる状況下にあっても、お前は彼女を見捨てなかったのだろう?」
謙信「一度守ると決めた者を、上杉軍は決して見捨てない。故に、お前の判断は正しかった」
謙信さんの言葉を聞いた景勝くんは、そこではじめて、ふっと口の元をゆるませた。
景勝「……はい、ありがとうございます」
(わぁ……景勝くんって、嬉しい時はこんなに優しい顔するんだ)
そんなことをふと思った直後、謙信さんが、上杉の城がある方角へと目を向けた。
謙信「……ここで長々と話し込むわけにもいくまい。まだ斥候を潰しただけだからな」
謙信「大火となる前に、降りかかる火の粉を払うぞ」
兼続「景家さんと景持さんを待って、全軍突撃ですか?」
謙信「いや。我が城に向かった武田軍は陽動部隊だ。奇襲にしては妙な動きをしていたからな」
謙信「本体は別にいる。陽動部隊で我が軍をおびき寄せ、本体と挟み撃ちにするつもりなのだろう」
謙信「_よって、こちらも敵を挟み撃ちにする」
その言葉に、私はもちろん、景勝くんと、兼続さんも息を呑んだ。
兼続「それじゃあ、ここに来る前、景家さんや景持さんと別れたのは……」
謙信「ああ、二人には陽動部隊の迎撃を頼んだからだ。その隙に、我々で敵本体に奇襲をかける」
謙信「信玄はおそらく本隊に居る。今日こそ、奴との因縁に決着をつける」
戦いになる_
(きっとさっきのとは 比べられないくらいの……)
大きな戦いが_