• テキストサイズ

【YOI男主】大切な人【男主&勇利】

第1章 波乱の幕開け?


(きっと、こっちが本当のコイツなんだろうな)
勇利の前では精一杯虚勢を張っていた純だったが、勇利の姿が見えなくなった途端堪え切れなくなったのか、ヴィクトルの腕の中で涙と一緒に素直な感情を露わにしていた。
「まったく…俺達が間に合ったから良かったものの、夜の裏通りのバーに独りで入るだけでなく徒歩で帰ろうだなんて、今日びバックパッカーだってやらないぞ。反省しろ!」
「ご、ごめ…んっ、ごめんなさい…っ…」
最早ヴィクトル相手に軽口を叩く余裕もない純は、やがて腰が抜けてしまったかのように地べたに坐り込んでしまう。
やれやれ、とヴィクトルもまた腰を落として純の背を叩き続けていると、買い物から戻った勇利が先程以上に慌てふためきながら駆け寄ってきた。
「あ、ゆうり、お帰…」
「ごめん、純!怖かったよね!?本当にごめんっ!僕の所為で…!」
「ち、違っ、勇利は何も悪くないっ。これは、僕の不注意や!」
勇利に気付いた純は、懸命に表情を取り繕おうとしたが、彼の止まらない涙と引きつった口元を認めた勇利は、昨シーズンの全日本で彼が自分に打ち明けてきた事を、今更のように思い出した。

『ホンマの僕は、弱みを見せたなくて陰でコソ勉しとるだけの、意地っ張りのビビリなんや』

自分より頭が良く、どんな時でも飄々としていた純の姿が、その実相当な努力とやせ我慢からのものだったと知った時の驚きは計り知れないものだった。
全日本や年末の長谷津でのやり取りを通じて、それなりに理解し合えたつもりでいたが、まだまだ自分は純の事を何も判っていなかったのだと、勇利は心の底から後悔していた。
「今回のは、僕の自業自得や。勇利との事は何も関係あれへん」
「そんな事ない!僕と喧嘩しなかったら、純はいつもみたいに遅くなったらタクシーで帰ってたし、第一独りでバーになんて行かなかっただろう!?」
「せやから…」
「2人共そこまで。いつまでもこんな所にいても仕方ないし、まだ夜は冷えるんだから、ひとまず帰るよ」
不毛な言い合いを続ける勇利と純を止めると、ヴィクトルはスマホから配車の依頼をした。
/ 23ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp