• テキストサイズ

【YOI男主】大切な人【男主&勇利】

第1章 波乱の幕開け?


「お、おい!?しっかりしろ!」
「こいつ、カラテの使い手か!?」
(アホか。僕がやった事あるんは、体育の時間の柔道くらいや!)
心の中でツッコミながらも、純は男達を牽制する意味であえて口角を笑みの形にしながら、逃げるチャンスを伺っていた。
こちらが怯えている姿を見せてはいけない。
(現役の頃を思い出せ…ピンチの時こそ余裕なフリするやせ我慢は、昔から得意やろ?)
ハッタリの構えのまま一歩足を踏み出した純に、男達は動揺した様子を見せる。
1人が動けないでいる今の内に、何とかこの場から逃げ出す算段を必死に考えている純の耳に、ふと新たな声が聞こえてきた。
「おまわりサン、コッチ!」
「コラーっ、何をやっているんだお前達!」
「ちっ、ヤベェ…」
「ずらかるぞ!」
その声を聞いた男達は、純から離れると一目散に夜の闇へと逃げ出していく。
突然の事に状況を把握出来ないでいる純の元へ、やがて見覚えのある2つの人影が近付いてきた。
「純!」
「あ…」
息せき切らせながらこちらへ駆け寄ってきた勇利の姿に純は一瞬だけ無防備な顔をしたが、慌てて我に返るといつもの笑顔を作った。
「勇利…デコもどうしてここへ?」
「純が独りでバーにいたって聞いたから、ちゃんと帰ってるか気になって…怪我とかしてない!?」
「平気や。丁度僕もあいつらから逃げ出そうとしてた所やったし。勇利のお蔭で無駄な騒ぎを起こさんで済んだわ。有難うな」
「俺の芝居も、中々だっただろ?」
先程警官のフリをしたヴィクトルの得意気な表情を見て、純は心から安堵の息を1つ吐くと頷く。
「だけど勇利は、もう少しロシア語の発音がスムーズにならないとね。俺大声出して喉乾いたから、あそこのミニマートで何か買ってきてよ」
「え?」
ヴィクトルに紙幣を渡された勇利は、戸惑いながらも言う通りにした。
勇利の姿が大通りの店へ入って行くのを確認したヴィクトルは、純の身体をそっと抱き寄せると「もう大丈夫だ」と優しく囁く。
「こ、怖、怖かった…僕、怖…っ…!」
否や、純は全身を小刻みに震わせながらヴィクトルに縋り付くと、嗚咽を漏らし始めた。
/ 23ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp