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【YOI男主】大切な人【男主&勇利】

第1章 波乱の幕開け?


「気を悪くしたらごめんね。純は、何か僕に遠慮してない?」
「え…?」
ためらいがちに切り出された勇利の質問に、純は数度目を瞬かせる。
「だって、前に僕が純の『SAYURI』を滑りたいって2人で大阪のリンクへ出かけた時の方が、僕の前で純は実際に滑って見せてくれたから」
「そら、あれは元々僕のプロやし…」
「今季、僕の為に作ってくれたEXプロも、振付師上林純のオリジナルでしょ?」
「…!」
「それなのに、純はリンクであまり実演してくれなくて、何だか理屈ばかりこねてるなって思った。膝が痛くて滑れない訳じゃないんだよね?」
重ねての問いに、純は首を横に振った。
確かに現役時代に比べて格段に減ったものの、純は今でも、週の半分近くはリンクでの練習時間を確保している。
「それなら、もっと僕に純のスケートを見せてよ。僕が一番知りたいのは、教えて欲しいのは、純のスケートを通じた技術や表現で、純の理論じゃないんだ」
軽く拳を握りしめながら言葉を続ける勇利を見て、純は、片手を口元に当てて俯いた。
「…どうやら『百聞は一見にしかず』だったね。俺も、お前のスケート理論は間違ってないとは思ったけど、滑れる癖にそれを疎かにするのはどうなのかな?」
勇利と純を見比べながら、ヴィクトルは表情を綻ばせる。
「それとも、自分のスケートを勇利や俺達に見せる自信はない?」
「…アホ。確かに競技者としては君らに敵わんけど、僕のスケートそのものを蔑ろにされる謂れはないわ」
僅かに語気を強めた純の返答を聞いて、ヴィクトルは脳裏にある一計が閃くのを覚えた。
「よし、じゃあお前のスケートの技術や表現力が衰えてないか、俺がテストしようかな」
何処か悪戯っぽい表情を浮かべるヴィクトルに、純も勇利も僅かに身構える。
「以前、勇利がお前のプロを滑った事だし…今度はお前が勇利のプロを滑るってのはどう?『エロス』とか」
「ぅえっ!?」
予期せぬ大ハードルに、純の口から率直な感想が漏れた。
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