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【YOI男主】大切な人【男主&勇利】

第1章 波乱の幕開け?


「お前って、勇利以上の泣き虫だったんだね」
再びリビングのソファに腰を下ろした純は、隣に坐るヴィクトルから渡されたタオルで、最早止まることを知らない涙を拭い続けていた。
「…いつもは、こんなに人前で泣いたりなんかしいひん…っ。ただ、僕の所為で勇利が…」
「そう、半分はお前の所為。『もっと自分を大事にしろ、お前にもしもの事があったら、誰が一番悲しむと思ってるんだ』って、去年長谷津で俺に啖呵切ってきた癖に、何てザマだよ」
かつて勇利の実家の露天風呂でヴィクトルと取っ組み合いをした時の事を仄めかされて、純は何も言い返せずに視線を床に落とす。
「…だけど、残りの半分は勇利の所為。勇利もそれを判ってるから、『ヒゲさん』と話をしに行ったんだよ」
「…それ、あの人の事?」
「お前がいつも言ってるじゃん♪」
何処か悪戯っぽい顔で返されて、純は複雑な表情をする。
「お前は理不尽だって感じるかも知れないけど、ヒゲさんの気持ちも判ってやりなよ。誰よりも一番お前を大切に想ってる人なのに、お前が辛い時傍にいてやれないって、くるものがあると思うよ?それなのに、お前はやたらと勇利の事庇ってばかりで、良い気はしなかったんじゃないかな~」
「…」
言いながらヴィクトルの左手が、純の頭を引き寄せて来る。
そのまま頭を撫でられた純は、無言でヴィクトルの肩にもたれかかるようにその身を預けた。

やがて、マッカチンの鳴き声と勇利の足音を耳にした純は、慌ててヴィクトルから離れて立ち上がると、リビングに戻って来た勇利を迎える。
「勇利…」
「あ、純。ハイこれ。結構長い事話し込んじゃってゴメンね」
殊の外あっけらかんとした表情の勇利からスマホを返された純は、その黒い瞳を丸くさせる。
「だ、大丈夫やった?ヒゲにえらい怒鳴られたんと違うか?」
「え?ううん、それは全然。ずっと普通に話してたから。藤枝さん、純の事凄く心配してたよ」
そう答える勇利の表情からも嘘や隠し事のようなものは感じられず、純は些か拍子抜けしたようにソファへ脱力する。
暫しそのまま無言の状態が続いたが、純の視線に気付いた勇利が、徐に口を開いてきた。
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