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【YOI男主】大切な人【男主&勇利】

第1章 波乱の幕開け?


「それ、どういう意味や?いくらヒゲでも言ってええ事と悪い事あるで」
「本当にお前がやりてぇのは、勝生の振付なのか?それとも勝生の傍にいる事か?…ヴィクトルと違って、お前じゃ相手になんねぇって拒否されてもか!?」
「せやからそれは、互いの甘えとすれ違いから起こった諍いに過ぎひん言うてるやろ!?今日の事はちゃんと謝罪し合うて仲直りしとるわ!」
藤枝にそう怒鳴り返しながらも、純は、心の何処かが図星を指されたようにチクリと疼くのを覚えていた。
勿論、振付師としての新たなスケート人生を歩めた事は嬉しい。
しかし、本当にそれだけなのだろうか。
「あの時全日本で、僕は勇利と約束した。僕の力を求めてくれた勇利に、出来る限りの事をスケートで伝えようて決めたんや」
「伝えられずに勝生に拒否られたヤツが、何抜かしてやがる」
「…えらい絡んで来よるな。せやからそれは…!」
「おい、」
いつになく野太い藤枝の声に、純は無意識に身を竦ませる。
「勝生呼べ」
「な…勇利は関係あれへんやろ?今回の不始末は僕が」
「…ええから、勝生を呼べ言うてるんや。早よせんかい!」
「お願いやから、そんな怖い声で怒鳴らんといて!」
余裕のない純の口から、悲鳴のような声が上がった。
出身は大阪だが、幼少期から学生時代までを海外と東京で過ごしていた藤枝は、普段殆ど関西弁を話す事はない。
あるとすれば、それは彼が心の底から激怒している時だけで、純ですら知り合ってからこれまで数える程度しか耳にした事がないのだ。
「お願いや、堪忍して!勇利は悪くない!叱るなら僕だけ…」
「俺の言う事聞けへんのか?純!」
「尚寿さん!」
半ば藤枝の名を叫びながら、純は床に泣き崩れる。
すると、背後から伸びてきた手が純のスマホを取り上げた。
慌てて振り返ると、何処か神妙な面持ちの勇利がいた。
「勇利?あかん、待って!」
純の制止に首を振りながら、勇利は純から離れて別の部屋に移動しながら、スマホの向こうの藤枝に話を切り出した。
「お電話替わりました、勝生です…はい。この度は本当に申し訳ありません…」
自分の不甲斐なさが藤枝にも勇利にも迷惑を掛けた事に純が涙を止められないでいると、ヴィクトルが腕を引いてきた。
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