第1章 *ひみつの…【谷山紀章】
『ふぅ……』
今日の最後のお仕事、ラジオの収録が終わった。
私はイスに腰掛けて後ろへ腕を伸ばす。
………ん?
なにかに手があたる。
「ちょっとみくちゃん、こんなとこで大胆だなあ」
頭上で聞き慣れた大好きな声がする。
『へっ??紀章さんいたの?』
「結構前からいたよ〜?
ていうか、手。どけてくれないかな?」
ああ、何かに触れたと思ってたら紀章さんだったのね……
……って!!!
『わわわ、ご、ごめんなさい!
わ、わざとじゃないの!!!』
急いで手を引っ込める。
私の手が触れていたのは、紀章さんのジーンズの窓のとこ。
てことはつまりそういうことで、そういうことってことはその……、いやなんでもなくて、
焦る私を見てニヤリとする紀章さん。
「ふーん?無意識にも触りたくなっちゃったの?
そーんなやらしい子だと思わなかったなあ」
『ちがっ……!!』
「今夜、楽しみにしておくよ。」
とだけ言い残して、じゃあね〜と手を振った。
『…もう。』
火照った顔に手を当てる。
そう、
私は人気声優の谷山紀章さんとお付き合いしている。
誰にもバレないように、こっそりと。