第5章 本心と本音
『で、でも!貴大には彼女いるし…今さら……。』
「夜海、まだちゃんと自分の気持ち伝えてないだろ?人のことを思うのも大事だけど、大切な気持ちを伝えないままで、夜海は後悔しない?」
『………でも。』
この間の貴大の彼女さんの様子からして、2人が別れるってことはないはず。
貴大も何気にその子のことを大切にしてるし、私が告白したところで何かが変わるということはないと思っていた。
「大丈夫だって、きっと夜海の気持ちは花巻に伝わるから。…………ほら、今ならまだあいつ近くにいると思うから、行きなって。」
一静にポンと背中を押されて1歩前に出る。
『……一静。』
「"松川"。恋人解消だから今からは前みたいに苗字でいいよ。」
振り向いて呼ぶと、そう言われた。
『……っ!ありがとう…松川。』
「こっちこそ、ありがとうな夜海。楽しかった。」
松川の優しさが痛いほど嬉しかった。
私に優しくして、支えてくれたのに、何も出来ないまま、私に貴大のところに行かせてくれた。
感謝の申し訳なさいと思いながら、私は勇気を振り絞って走り出した。