第3章 雨
「この、ガトーショコラ美味いよ。夜海は本当料理上手だよな。」
『そんな事ないよ…でもありがとう。』
まだ、少し時間があるから、私のあげたバレンタインにチョコを食べてもらうことになった。
昨日の夜、みんなに渡したチョコタルトと一緒に作ったガトーショコラ。
自分的にも好きなスイーツで良く作っていたから失敗はしなかったけど、食べてもらってそう言われると嬉しい。
『あ、あのね。』
私は告白の返事をしたら、言おうと思っていたことを伝えようと切り出した。
「ん?」
『その、私達が付き合ってることは学校では内緒いしたいんだけど…。』
「花巻の事があるから?…もし嫌だって言ったらどうする?」
『え、いや、その……。』
少し真剣そういう松川の言葉に私は戸惑った。
別に、貴大にも彼女がいる訳なんだし、隠すことでもないのだけど、やっぱり気づかれたくないという気持ちもあって…。
すると、そんな私を見ていた松川が私の頭をポンポンと撫でた。
「なんてな。いいよ、それで。」
『ほ、本当?』
「あぁ。……そのかわり、2人だけでいいから時は名前で呼び合いたい。」
『え?名前』
「そう、苗字じゃなくてちゃんと下の名前。」
『……うん。……わかったよ、一静。』
せっかく松川が私のお願いを聞いてくれたのだから、
私も松川の望みは叶えてあげたいと思った。
「ありがとう、夜海。……じゃあ部活行ってくる。
ガトーショコラ、本当ありがとうな。」
『うん、頑張って。』
そう言ってくれて彼は準備室から出て行った。
そのあとは部活中、由紀に散々その時のことについて聞かれた。